蕎麦屋のご主人

真庭市蒜山に

「叉来(またぎ)」さんという

それはそれは旨い

十割そばだけの蕎麦屋さんがあります

 

はじめて訪れた時、

蕎麦の風味、歯ごたえ、のどごし、ゆで加減

蕎麦つゆに辛味大根、

接客のやさしさ、おもてなし

手作りロッジの木のぬくもり

挙げればきりがないほどの

素敵さに

いっぺんに魅せられて

以来三度(みたび)訪ねましたが

いつも「今日の蕎麦は売り切れました」の張り紙...

午後12時台でも遅すぎるほどの

大人気の名店です

 

それが今日は、ちょっと遠回りして

落合から新庄村を抜けて

蒜山へ向かったものですから

お店に着いた時刻が

午後1時10分

お店の駐車場には車が1台だけで

「ああ...また遅すぎたか」

と思いながら玄関へ向かうと

「のこりわずかです」の張り紙!

 

奇跡的に迎えていただき

名物「丸抜(まるぬき)そば」

(そば殻を取った十割そば)

を堪能させていただきました

これがラスト蕎麦と分かったのは

直後に訪ねてきたお客さんに

「今日はもう終わったんです」

と奥さまが申し訳なさそうに

対応されていたからです

なんという幸運でしょう

「もう無理かな」と思う気持ちが

微塵もなかったことが

よかったのかもしれません

 

十割そばは特に好んで、中四国の名店を訪ねて

食べ歩いていた時期がありました

例のごとく〝蕎麦打ち職人〟になって

余生を送ることも夢見ていました

 

ところが、開店したころから通い詰めていた

倉敷市内にある、とある名店が超有名になり

まったく入れなくなってから

私の〝蕎麦熱〟はみるみるうちに

冷めていってしまいました

なにせ、その名店の蕎麦を越える

十割そばとは

とんと出会えなかったからです

 

それから数年たってからの

「叉来(またぎ)」さんとの出会いでした

くすぶっていた〝蕎麦熱〟が

フライホイール接続、点火!

したという次第です

 

お会計を済ませると

ご主人が厨房から出てきて

話しかけてくれました

 

「いまハマってることはなんですか?」と

 

なんにでも、のめりこみやすい私の性分を

話したあとのご主人の言葉が

絶品でした

 

『わたしなんて、もう蕎麦が好きで好きで

蕎麦を打ちながら

そば粉と一緒にまざっちゃうくらいですよ』

 

これぞ究極の一体感

〝全身全霊、魂を込める〟を越えた

『まざっちゃう』

最高の一言でした

これからのキャメラワークは

『まざっちゃう』でいきます!

 

ああ、「叉来」さんの蕎麦に

ご主人の心はこもっていますが

ご主人本人は入ってませんので

ご心配は無用です

 

と書きながら

〝自分自身を混ぜるんじゃなくて

自然に『まざっちゃう』〟

というのが

なんとも奥ゆかしく

深い言葉だなと思いました

 

お人柄も素敵な、蕎麦屋のご主人からの一言

『まざっちゃう』に

ハマりました

2023年10月22日|日日のこと:daiary